儒教の長幼の序といえば、『記紀』には「応神天皇は末息子の菟道稚郎子(ウジノワキノイラツコ)を後継者に指名したが、応神天皇の死後、菟道稚郎子は兄の大雀命(オオサザキノミコト)に譲ろうとし、双方で長いこと譲り合った末に、菟道稚郎子が兄に譲るために自ら命を絶ったので大雀命が即位して仁徳天皇になった」という「儒教の鑑」のようなウルワシい(?)オハナシが記されています(^o^)。
けれど仁徳天皇は架空の人物ですし、応神天皇は3世紀の天皇ではありませんから、この「謙譲の美徳として、古今に関わらず範とされている」(前鳥神社の御神徳から抜粋)というオハナシは作り話であって、全くのウソなのですよね。
古今東西、権力の座を得るために血で血を洗う戦いや、陰謀や暗殺が繰り返されて来たというのが現実であって、王座を譲ることが「謙譲の美徳」だと考えた人も、その美徳のために王座を譲ろうと考えた人も、ましてや自殺してまで他人に譲ったりした人もいないのです<(_ _)>。
このオハナシはウソで仁徳天皇は架空の人物なのですが、菟道稚郎子は実在の人物で、欽明天皇のお父さんです。もちろん自殺などしていませんし、宇治には継体天皇陵である今城塚古墳とほぼ同じ頃に、ほぼ同形・同規模の大王墓が造られています(^o^)。学者さんたちは、この巨大な古墳は「地方の豪族の墓」だとしているようですが。
宇治二子塚古墳
『記紀』がわざわざこんな荒唐無稽なオハナシを作ってまで菟道稚郎子のことを記したのは、この巨大な大王墓があったために菟道稚郎子の存在を隠すことができなかったからではないでしょうか(^o^)。でもこれも「語るに落ちる」で、あまりにも荒唐無稽なオハナシにし過ぎたようです(^_-)。
この菟道稚郎子は、宇治の宇治神社や宇治上神社に祀られていますが、相模国四の宮の前鳥神社にも「学問の神様」として祀られていました(^o^)。
相模国四の宮・前鳥神社
韓国歴史ドラマには、王が、晩年に迎えた若い妻が産んだ末息子を溺愛して後継者にしようとしたために起きた争いを描いたものがいくつもあるようですが、これも古今東西良くある話だったようで、菟道稚郎子も応神天皇の末息子だったようですが、キム・ジョンウン氏も3人目の妻が産んだ末息子のようですね。
韓国歴史ドラマは似たような権力闘争と陰謀の話ばかりなので、どの王朝のどの王様の話だったか忘れてしまいましたが、李氏朝鮮の太祖・李芳遠(イ・バンウォン)も15代国王の光海君(クァンヘグン)も継承に絡んで異母弟を殺していますよね<(_ _)>。
若い妻とその子にすれば、もし異母兄が後継者になれば、自分たちは殺されてしまうわけですし、異母兄にすれば、もし腹違いの弟が後継者になれば、その座の脅威となる自分たちは殺されてしまうわけですから、後継争いには双方とも必死だったようです。
私は現在の北朝鮮のことは、時々ニュースで見る映像以外ほとんど知らないのですが、5年前に末息子のジョンウン氏が後継者に指名されたことを知った時に「リアルタイムの韓国歴史ドラマが始まるのではないか」と危惧したのはそういうわけなのです<(_ _)>。
派閥の粛清は2012年にはすでに始まっていたようで、異母兄のジョンナム氏も5年前から命を狙われていたそうですが、とうとう殺されてしまったのですね。本当にドラマそのままの展開になって来ているようですが、この体制下で、あといったいどのくらいの人が殺されることになるのでしょうね(T_T)。