2016.4.11 カタクリと鹿と塩と人間
カタクリは古語ではカタカゴと呼ばれ、堅香子の字を当てられていますが、花を付けない株は一枚葉(片葉)であること、葉に鹿の背中のような斑点があることから、「片鹿子」なのではないかという説もあるようです。
カタクリの葉
カタクリは花も実も種も堅くはなく香りもありませんし、ものの名前は身近なものに見立てて付けられることが多いようですから「片鹿子」であろうと私も思います(^o^)。
鹿は、日本人にとってはとても身近な存在だったようで、様々なものが鹿の模様に見立てられて「鹿の子」と呼ばれたり、鹿に因んで命名されたりしているんですよね。
和菓子の「鹿の子」、和装の「鹿の子絞り」などはすぐ思い付きますが、他にも鯨肉のあごからほほにかけての周辺の肉で脂肪の中に筋肉が散っている部分も「鹿の子」と呼ぶそうですし、和装関連では「鹿の子地」「鹿の子帯」「鹿の子編み」「鹿の子刺し」「鹿の子繍(ぬい)」「鹿の子織り」など、動植物では「鹿の子百合」「鹿の子草」「鹿の子蛾」「鹿の子貝」「鹿の子魚」などなどいろいろあります。
地名にも鹿島・鹿教湯・鹿塩・鹿児島・鹿浜など鹿がたくさん使われていますし、諏訪大社の御頭祭では75頭の鹿の首が供えられていましたし、鹿島のカミサマは、鹿の背に載って奈良の春日大社まで運ばれたことになっていますしね(^_-)。
茨城県の鴨鳥五社神社で初めて「カゴノキ」というものを見た時、「籠の木」かな?と思ったのですが、幹の斑模様を見て「鹿子の木」だと分かったこともありました(^o^)。
カゴノキ
この神社では灯籠にも鹿があしらわれていました(^o^)
↓にカゴノキの模様がよく分かる写真があります
そんなに鹿が身近だったのは、食料としてだけではなく鹿が塩の在り処を教えてくれていたからだったのではないでしょうか(^o^)。野生の肉食動物は赤味の肉や血から塩分を採ることができますが、草食動物には塩そのものが必要なので、鹿などの足跡を辿っていくと塩舐め場や塩泉など塩の出る所に行きつくことができ、それが人間が塩を探す最古の方法の一つだったそうです。
トナカイは人間の尿に含まれる塩を求めて人間の暮らす所に来ることが観察されているそうですから、鹿も集落の近くに来ることがあったのかもしれませんね。
ちなみに家畜の馬は人間の5倍、牛は10倍の塩を必要とするのだそうです。
ニジェールの家畜用の土塩(右端のコーンのようなもの) 左の棚はオーストリアとドイツの岩塩